ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踏団
国立劇場で、ピナ・バウシュを観てきました。
いつもの国立劇場とはあきらかに客層が違って不思議な感じ...。
30分前に到着したのですが、当日券売り場は長蛇の列でした。
きっとリピーターだわ~、と、期待が高まります。
「カフェ・ミュラー」
ピナ自身も出演する作品です。彼女の役(というより存在)は、舞台進行に大きな影響は与えないものの、この作品に彼女がなくては成り立たない、そんなポジションでした。
その他のダンサーたちの動きがからみあって、時が過ぎていく、そんな作品です。
私が感じたままを書きますと、
目の見えない女は「困難や苦悩」を表している。
椅子をどけ続ける男は彼女の障害を取り除く「援助者」、たとえば父親のような存在であるが、彼女に手を触れることはなく、本質的な援助者にはなりえない。
上着を着ない男が表れ、女と出会い、愛を感じあう。
若い男が表れ、抱き合う二人を引き裂いて、男が女を抱きかかえるように強要する。若い男は二人の関係を「こうあるべき」と主張する、「世間の目」、言い換えれば「偏見」。
赤い髪の女は「世間一般の女」を表し、最初はおろおろと様子をうかがうだけ、やがて上着を着ない男を愛するが、男はそれを受け入れない。
上着を着ない男と目の見えない女は、関係が深まるにつれて互いを傷つけあう。そして男自身も苦悩を抱えるようになる。二人はバラバラになる。苦悩に耐えかね、地に崩れ落ちる男を女が支える。女はただ援助される側から初めて人を援助する側にたつのだが、この時初めて女の明らかな意思を感じる...。
その間、ピナが全体の空気を支配するような幽玄な動きを続けている。
観てない方にはさっぱり分からないと思いますが...
椅子をどけ続ける男の表情が物悲しくて、舞台空間に流れる不思議な時間経過と筋書きのないような、あるようなドラマ展開に不思議と涙があふれてしまいました。悲しいというわけではなく、前にもこんな気持ちになったことがある、というような、そんな涙でした。
セットの「回転ドア」は、女がその中でぐるぐる回るだけで、うまく出られない、困難から脱出できない状態を表していました。三方向の透明な壁(マジックミラー?)は見えない障壁を、舞台上そこかしこにおいてある机と椅子は、日常にある小さな障害を表しているように思いました。
この作品の素晴らしさに圧倒されてしまった...。
変に予備知識を入れずに好き勝手な解釈で見れたのがよかったかも。
パーセルのアリアも美しかったです。
「春の祭典」
もともとはこちらがお目当てでした。どうしてもベジャール版との比較になってしまいますが、ピナのハルサイは、女性の生贄が選ばれるまでが、長くキツイ。ひたすら女性がいたぶられ続け、辛く感じる時もありました。生贄が決まってから、男女とも激しく踊り狂い、最後に生贄の女性が一人で力を振り絞り踊りきる。その周りの男女がなんとも冷ややかで恐ろしい感じさえしました。個々人の表情を見ると、悲しそうな人、哀れむ人、目をそむけている人もいるのですが、全体としては生贄に対して関係を拒むような空気でした。生贄のソロが終わると同時に曲も終わり、暗転。鑑賞後は脱力して拍手もできませんでした。
暗転して数秒沈黙が続きましたが、私の隣の女性は早々拍手を始めました。私は感動してるんだけど、拍手できる気分じゃないなーと思っていたのですが、リピーターなのかピナファンなのか、めちゃくちゃ熱い拍手が送られていました。カーテンコール上のダンサーたちは押し黙った表情のままで、最後にピナが緩やかな笑顔で拍手に答えていたのがとても印象的でした。
私は常々、ベジャールは愛をダンスで表現する天才だと思っているのですが、ピナは人間の苦悩をダンスで表す天才なのかも。本当に素晴らしかったです。別の作品をブッパタールへ観に行きたくなりました。
ついでに思ったのは、ハルサイを「楽曲」としてだけ認識している人や、逆に「バレエ」としてだけ認識している人はもったいないな、と思えました。ハルサイはやはり「バレエ音楽」なのです。
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» 騙されていました。バーンスタイン・センチュリーエディション(春の祭典) [オン・ザ・タウン]
バーンスタイン&LSOの春の祭典。音が良くなったなどと喜んでいましたが、あのバー [続きを読む]
受信: 2006年5月 6日 (土) 11時05分

コメント
行きたかったのですが、時期的に妻の出産近しでギャンブルで4月のチケットを色々買えなかったのです。
このバレエ団の前半の演目で「こんなすごい世界がるのか!」と15年暗い前に思ったので生で観たかったなぁ。
春の祭典に限らず、ストラヴィンスキーの結婚とかも生で観たいですね。コープランドなどもっと20世紀の作品が出てこないのは残念です。バレエで圧倒されるパワーを感じて拍手も出なくなる瞬間に是非今後、親子で多く体験できればと思います。
子供誕生前のコンサートは昨日行った、キャサリーン・ジェンキンスになりました。
投稿: 謙一 | 2006年4月16日 (日) 14時44分
謙一さん、ギエム以来、バレエへの興味が高まってません?!
バレエにはまるとお金もかかりますよ~(脅してるわけじゃないけど、ホント)でも、仲間が増えるのは嬉しいわ。
ピナは胎教にはちょっとお薦めできないかもしれませんね(^^;)
でも、素晴らしい空間だったので、機会があれば是非観てください。
投稿: Mikan | 2006年4月16日 (日) 21時18分
春の祭典で、録音の内容間違いのCDが我が家で発見されました。
参りました。
投稿: 謙一 | 2006年5月 6日 (土) 00時02分
トラックバックのやり方がいまだによくわからないです…
投稿: http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9843978 | 2006年5月 6日 (土) 00時10分